第68話 Bランク情報

 「でも沙田くんは御名隠しである限り、どこかでファーストルーツに辿りつくはずなんだけど」

 「ファーストルーツ?」

 「そう。たとえばこれを見て」

 校長は、校長らしい派手なスマホを掲げた。

 オフホワイトのボディにラインストーンでデコレーションした最新機種だ。

 いくつかの操作をしてから、ブラウザのアドレスバーにIPアドレスをダイレクト入力するとどこかのWebが開かれた。

 スマホ画面には、あまり派手ではない、静かめのサイトが表示されてる。

 「これがBランク情報。世界中にいる能力者たちのデータベースとアヤカシの情報共有サイト。組織関係者だけが閲覧を許されたWebね」

「へ~」

 そっかネットなら世界中のどこからでも、すぐにアクセスできるし会員制クローズドサイトなら、そうそう外部から見られる心配もない、ましてや各国の主要機関が運営に関与してるなら安心だろう。

 校長はランディングページの右サイドバーのいくつかの項目のなかから【能力者照会】をタップした。

 「まあ能力者側の登録は任意なんだけどね?」

 さらに慣れた手つきで、つぎへのページへとアクセスした。

 「これを見て?」

  校長は開かれたデータベースを俺に顔の前に掲げた。

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 Jeanne d‘Arc

 読み:ヤヌダーク

 国籍:フランス

 趣味:人を助けること

 嫌いなもの:“火”

 好きなもの:“火”を使わないもの

 備考:現在はロベスピエール転生体と戦闘中

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 「こんなふうに各国の能力者検索ができるの。さらにその日に退治された上級アヤカシがいれば記事にもなる。どこの国でどんなアヤカシが退治されたのかが一目瞭然」

 「各国との連携がスゴイですね?」

 「ええ。上級アヤカシは世界共通の敵だからね。……私は更新されるたびに期待していた。どこかの誰かがバシリスクを倒したっていう記事を。でもダメね……期待したなにかが叶ったことなんてない。やっぱり他力本願じゃなくて、自分で動かないと」

 「でもバシリスクを倒せば倒したに越したことはないんじゃ?」

 たぶん、俺のこの意見は間違いじゃないはずだ。

 「ううん。もうわかったの」

 校長はゆっくりと首を振った、そしてスマホを十字架のように胸の中央で握りしめると、今日初めて強気な顔を見せた。

 それは、まるでなにかを吹っ切ったように凛々しい。

 「待つってことは日照りに雨を望むようなもの。でもそれじゃダメなの。水を求めて進まないと。例え枯れるにしても“水を探してる”ってだけで、心の持ちようが違うから」

 その言葉はつい数秒前の俺の意見を覆すには十分だった。

 「向き合うってことは戦う準備をするってことですか?」

 校長、さっきより元気になってきたな。

 「ええ、そうね。たしかに私の能力は戦闘向きじゃない。だけど他の能力者のサポートはできる」

 「そう言えば、校長は治癒能力者だったんですね?」

 「そうよ。まあ、彼女・・のように時代の救世主にはなれないけど……」

 校長は自分のスマホまじまじ面眺めてから、親指と人差し指でピンチアウトした。




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