第43話 学校の6不思議。ひとつ足りないなら俺が創ってもいいよな?

「まあ、でも、沙田のおかげで助かったよ?!」

 九久津は俺を褒めながら笑顔を見せた。

 いつもの九久津だ。

 なんかイケメンって傷とかあったほうがカッコいいよな、卑怯じゃねーか!!

 あれ……? この顔、恐竜のときの人に似てる……あの人も傷だらけだったよな……それでも家に送ってくれたんだよな。

 あの人って誰だったんだろう?

 ――『時がきたら君の力を貸してほしい』

 脳内にそんな言葉が響いた……ラプラスとは違う声が。

 どうしてこんな言葉が……俺が覚醒したから……?

 誰の声だ。

 でも、どこか頼りがいのある声だ。

 「沙田の潜在能力はさすがだ!!」

 今思ったけど頭のなかの声、九久津に似てる……。

 なんでだ?

 まあ、声が似てる人もたまにはいるか?

 てことは顔もイケメンかもな。

 九久津は寄白さんの上体をゆっくりと起こした。

 朦朧としていた意識も回復して、いまははっきりとしてる。

 寄白さんは寝違えたときのように首に手を当てた。

 「痛ッ……」

 「美子ちゃん大丈夫? 手をかすよ?」

 (さだ……おそらく沙田の苗字は運命さだめ姓のはず。三竦のなかのプラスワン。忽然と歴史の闇に消えた一族)

 九久津は寄白さんに肩を貸したまま、廊下の壁際まで運んだ。

 そして体を支えながらも、回した手をサッと外した。

 「美子ちゃん、大丈夫?」

 寄白さんはスカートをヒラリとさせ、ひとり壁にもたれかかった。

 そのまま石膏の壁に全体重を預けてる。

 「ああ」

 まだ肩を上下に揺らして呼吸してる。

 それだけ大変な状態だったってことだよな。

 「よくやった。さだわらし」

 「あのさ。俺は“さだただし”って名前なんだけど?」

 「そんなの知ってるわ。バカが!!」

 良かった元の寄白さんに戻ったみたいだ。

 ストレートの髪型でこの性格ってことは、素の性格もこっちか。

 ツンツンだったか~orz。

 でもこの髪型も、カワイイかも。

 「じゃあ、なんで、さだわらしなんだよ?」

 「漢字にしてみろ?! そもそもすでに私の下僕だろうが。この情弱じょうじゃくDQNが!!」

 「なっ?!」

 復活したとたんに、なんつー暴言を吐くんだよこの女は。

 そう思ったけど、寄白さんの両耳の痛々しそうな、六つの赤い跡を見ると、いたたまれない気になった。

 まあ、この悪口くらいカワイイもんだ。

 この街の不文律は崩れた、この先アヤカシたちがどうなるか俺にはわからない。

 それでもここに居る四人が無事ならそれでいいと思う。

 「あのね、みんな聞いてほしいの? ヨリシロの社長と六角第一高校の校長の両立場から四校は新築しようと思うの?」

 校長は大粒の涙を流すと顔を覆った。

 けどすぐにクレンジングでもするように涙を払う。

 校長の意気込みが伝わってきた。

 ――いいけど。寄白さんも九久津も二つ返事で賛成した。

 良かった。

 こんどの涙は嬉し涙だ、俺にもわかる。

 校長も元気になったし、これはもしかしたら《保健室パンツ》あるかも?

 「それで六角市は元に戻るんですか?」

 俺は単純にこの街の今後が知りたかった。

 「わからない。でも六芒星が復活すれば……」

  そっか、大丈夫そうだ、いや信じよう。

  俺はすこし前から思っていたことをみんなに提案する。

 「六角第一高校の七不思議って六個しかないんだよな?」

 「そうだね」

 九久津は七不思議製作委員会委員長の顔に変貌した。

 あの日のあの変なテンションで演説していた九久津に。

 「じゃあ、ひとつ足りないなら俺が創ってもいいよな?」

 ――なに……?九久津と校長の声が合わさった。

 〇.一秒ほど遅れて寄白さんの――なんだよ……?も聞こえた。

 良かった三人とも興味を持ってくれた。

 「学校の七不思議の七番目は《学校の七不思議から、人知れずに生徒を守ってる戦士がいる》ってどう?」

 ――おお。九久津の一言。

 ――いいかも!! 校長の賛同も得た。

 今度は〇.二秒ほど遅れて寄白さんの――いんじゃない。が素っ気なく聞こえた。

 まあ、そのツンツンでこそ寄白さんだけど。

 「日本全国の七番目が《学校の七不思議から、人知れずに生徒を守ってる戦士がいる》になるように知名度を上げようぜっ?!」

 「おう、頑張ろう!!」

 俺の手を握る九久津。

 なんだこの親近感は?

 あっ、てのひらも傷だらけ。

 そうだよな、さっきまであんなに激しい戦いを繰り広げてたんだもんな。

 「これからはさだわらし、改めナードと呼ぶことにしてやる!!」

 寄白さんは相変わらずだった。




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