第41話 三人目

 {{ドライ}}

  さらにもうひとり、白い衣装の沙田おれ――Ⅲが現れた。

 「ドライか?」

 九久津の目ではもう、Ⅲの動きを捕えられないようだった。

 ただ俺にはⅡとⅢの動きがはっきりとわかった、この一手さき、どういうコンビネーションを見せるのかもまでも。

 (スゴい。まさかここまで)

 校長は目を見開き驚嘆おどろいてる。

 どことなく、気持ちを高揚たかめる感じで。

 逡巡まよっていた死者は、欠けた体を再利用し、鋭利な触手を数本、伸ばした。

 うねるようにして対象物へと襲い掛かった。

 だが、ただでさえⅡに振り回されていた死者は、突然目の前に現れたⅢに驚き、動きにも迷いが見られた。

 すでにⅢが放射状の衝撃波を放ってる。

 これが当たれば、相当なダメージだろうな。

 死者の体の残り三分の一に蜘蛛の巣状のヒビが入った。

 ヒビはピキピキと音をたて外側に向き裂け目を拡張させた。

 トゲは伸びきらないうちに瓦解する、無策な死者に、もはや勝機はないだろうな。

 「圧倒的だ」

 九久津は寄白さんの態勢を仰向けに変えて抱きかかえた。

 「見える、美子ちゃん。ついに覚醒したよ……」

 「沙田……」

 うっすらと瞼を開けた寄白さんは、おぼろげに戦闘シーンを眺めたあと、硬直した本体おれを見た。

 俺の頭のなかで声がする。

 『オマエは沙田雅さだただし真名まな運命雅さだめみやび。そこにおわす御方おかた依代妃御子よりしろひみこ殿。そなたは妃御子殿に従え』

 これがラプラスの声か。

 依代妃御子って寄白さんのことか……?

 ⅡとⅢは死者を前方と後方で挟んで、真っ黒な周囲のオーロラを引き剥がした。

 そのまま包帯を巻くようにグルグルと球状に包む。

 まるで二人の子供が回転式ジャングルジムで遊ぶ光景に似てる。

 蹴鞠けまりで使う、竹のボールのように規則正しく帯に包まれた死者。

 ⅡとⅢは、左右から同時にグシャっと球体を押し潰した。

 内容物を放射したり物体が破裂するようなこともなく、マジックのように死者はこの世から消滅した。

 断末魔のひとつもなく、あまりにあっけなく。

 同時にⅡとⅢも沙田おれの体へと戻ってきた。

 周囲の闇が透過するとじょじょにクリアになった、四階は鮮やかに色づき元の空間、つまり四階の廊下へと戻った。

 払われた闇と現実のコントラストが、色の比率を逆転させ、いつもの六角第一高校の日常へがかえってきた。




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