第40話 ラプラス

卒倒感と離人感を同時に体感してるみたいだ。

 まるで他人事のように、自分の意識が遠のくのを感じた。

 だいたい、なんで俺は、卒倒そっとう離人りじんなんて言葉を知ってるんだよ。

 第三者からは茫然自失し思考が止まったように映ってる。

 そう、俺はこのとき第三者として、いまのこの光景を見てた。

 俺の体から、気体とも呼べないエクトプラズムのようなモノが湧きだし二手に分かれた。

 「来た!!」

 九久津が叫んだ。

 九久津はこれを待ち望んでいたみたいだ、きっと校長と寄白さんも。

 寄白さんは一度、微笑むとスーっとまぶたを閉じた。

 《我々は知らない、知ることはないだろう》

 この空間に重低音の言葉が木霊した。

 これは誰の声だ? 俺のなかからでてる声なのか?

 「ラプラスの言葉だ」

 九久津の表情が一変し血の気が戻った。

 同時にゴーレムの憑依が解けた。

 どことなく希望を感じさせる表情をしてた。

 {{ツヴァイ}}

 この空間にもうひとり、白装束を着た、沙田おれ――Ⅱが出現した。

 なんだ? 俺が現れた。

 とたん死者に向かって黒い衝撃波を放った。

 瞬時に死者の右半分が消し飛んだ。

 あまりのスピードに左半身だけの死者は右半身を喪失うしなった自覚すらないようだ。

 左半身が右半身を見て初めて体の欠損に気づいてた。

 自分で言うのもなんだが、名医が手術したようにきれいな傷口だ。

 死者はやっと現実と思考が重ったようだ。

 『コワス』

 激高する死者はⅡに直進してきた。

 だが空間を移動するように瞬間的に死者の背後に周りこんだⅡ。

 死者が混乱してる、それは自分が到着したその場所にⅡはもう居なかったからだ。

 つまりはⅡは死者の攻撃スピードよりも速く動いたことになる。

 Ⅱは死者の、ま後ろから黒い衝撃派を細かく分散し散弾させた。

 機関銃のように真野の背部を貫通する。

 俺は死者とⅡの戦いをただ眺めていた。

 『…………』

 死者は、蜂の巣状に穴だらけの自分の体を見回すと硬直した。

 Ⅱの攻撃で体の総面積の三分の二を失っていることを、今更ながら気づいたみたいだ。

 わずかな迷いがつぎの動作を鈍らせたことに、外野の俺だからわかった。

 「死者は虎の尾を踏んだのかもしれないわ?」

 校長はあっけに取られながらもⅡの強さに期待してくれてる。

 (あれから約十年こんな強力に育っているなんて。私が一線から退く前だってこんなに強いモノには出会ったことはない……)

 九久津は死者とⅡの戦闘シーンではなく、まったく別の方向を見てた。

 「あっ、あれは……?」




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