第22話 チート

 逢魔おうまがとき、繰は校門に寄りかかり、沙田のいなくなったバス停を感慨深く眺めていた。

 (沙田くん。ずいぶん大きくなったわね……)

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 夕暮れも迫るとき

 沙田雅――六歳。

 六角市の中町に存在する六角大池。

休日などは家族連れで賑わう、いまも自然、溢れる憩の避暑地だ。

 池の周囲は小さな雑木林に囲まれている、そこに虫カゴと虫取り網を抱えて木陰に潜む沙田がいた。

 「この池の主を捕まえてやる。そしたらみんなに自慢できるぞ!!」

 水面を眺めて魚影に目を凝らしている。

 池の周囲は一・五キロメートルほどの楕円形で、面積は約九ヘクタール。

 水深も浅く小学生たちが遊ぶにもそれほど危険はなかった。

 小魚たちは群を作って集団で移動している。

 その群れはまるで一匹の大きな魚のように回遊していた。

 草むらから、カエルの――ゲゲゲゲゲという鳴き声や虫たちの周期的な合唱が聞こえる。

 「なんか小さい魚しかいないな~?」

 沙田は口をとがらせ――ああ~もう。と意気消沈していた。

 突然、水面にゆらゆらと波が立つと、波紋が大きく広がった、そのまま二重、三重に弧は拡散した。

 「なんだ?!」

 首を小刻みに動かし確認する沙田。

 「あれ~なにもいないぞ?」

 だがその波紋は水面からではなく上空からの気流だった。

 ゆっくりと段階的に空中を見上げる。

 「うわぁぁ!! な、なんだぁ!!」

 視線の先にはこの世のモノとは思えぬ獣がいた。

 沙田は動物園のような臭いを感じる。

 「これが六角大池の主か。この虫取り網では捕まえられないな~?」

 興奮した沙田を注視する沙田に、うり二つの少年が林の奥にいた。

 ただそこに立ち尽くし、能面のように表情を変えず獣を凝視している。




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