第211話 連携プレー 

 

 {{ツインクル}}

 俺よりも早く、寄白さんが動いてた。

 まあ当然の行動だけど。

 煌くコマが高速で宙を切り裂いてく、コマひとつひとつがモナリザに衝突した。

 五体同時にダメージを与えたけど、仕留めるまではいってないか。

 ある一体は頬であるだろう部分が抉れてる、もう一体は右手が吹き飛んでた、あとの二体は腹の辺りがべっこりと凹んでる。

 ……貫通まではしてない……意外にツインクルって重量級の技だな。

 モナリザはそれぞれに怯んで数歩後退した、いや、九久津の黒い風で動きが鈍ったぶん、後退ってよりは後ろに弾き飛ばされた感じだ。

 ブラックアウトしたアヤカシに痛みなんてないんだろう。

 痛みに反応するような声のひとつもない。

 モナリザは不気味に反撃の機会をうかがってるようにも見えるが、小刻みに痙攣しててそれどころでもなさそうだ。

 九久津の技がまだ効いてる。

 {{グレア}}

 寄白さんは、もう、つぎのイヤリングを手にしてた。

 光の槍が宙に浮く、でも、寄白さんどっち向いてんだ?

 「行け!!」

 寄白さんのグレアが、社さんによって土に囲まれたままのモナリザを貫いた。

 おお?! そっちか。

 あれっ? 気づけば、なんか俺らってイイ感じに連携とれてる?

 まるで土の煙突が崩れるように、閉じ込められてたモナリザごと崩壊した。

 けど土の塊のなかにはモナリザのパーツも一緒に散らばってる。

 社さんに付き添ってた一体のゴーレムは、すかさずトドメとばかりにドスドスと辺りを踏みつけた。

 土もモナリザも地均じならしのように、さらに細かく砕かれていった。

 社さんはというと動きの鈍ったモナリザたちを弦でグルグル巻きにしてる。

 スゲー!! バスケのスイッチプレーみたいだ。

 社さんが自分の手を真後ろに引くと、モナリザはギュウギュウに縛りつけられてミイラ男のようになってた。

 土のほうを寄白さんに任せて、社さんはあの四体を封じたってことか、って、その下準備は九久津の技だけどな。

 これが長年アヤカシと戦ってきた能力者たちの動きか。

 それぞれがそれぞれに考えて動いてる、きっとみんな、いくつかの選択肢を瞬時に選んで行動してるんだ。

 「行け!! ゴーレム」

 今度は寄白さんに付き添っていたゴーレムが、右端のモナリザに的を絞って拳を振りかざした。

 数秒のタメのあとに全力パンチを見舞う。

 ――ぐしゃん。

 そんな音を立てて社さんの弦ごとモナリザは押しつぶされた。

 あいつってすでに頬が抉れてたのにさらに圧死か、毛糸の束を足で踏んだみたいに潰れてる。

 {{レイ}}

 寄白さんは三つ目のイヤリングを手のひらでかざした。

 発光したレーザービームが放たれる、コンサート会場で回転しながら夜空を照らすような光は容赦なく右端のモナリザを撃ち抜いた。

 あいつは右腕のないモナリザだ。

 そいつはそのまま蒸発するように弦ごと消えた。

 残りの二体は俺がやる。

 たぶんこの行動は間違ってないはずだ。

 Ⅱの膝がモナリザの腹部に入った――ドス。っという鈍い音がした。意外と動けるな。

 社さんの弦って、こっちが攻撃のときは威力をそのまま通過させて、逆のときは威力を抑えるような材質だ。

 ほんと戦闘に特化した弦だ、【ドール マニピュレーター】の能力って。

 Ⅲも早めに出現すにこしたことはなかった、先手せんての行動も間違ってない。

 意外だけどブラックアウトのアヤカシでもそこまで恐れる必要はないな。

 俺のなかの弱気が消えてく。

 そもそも能力者が戦闘してる時点で防御力も上がってるんだよな?

 只野先生がホワイトボードに書いたメモにあった。

 俺らは格闘家、ボクサーやレスラーなみの身体能力だって。

 なら俊敏性や攻撃力も防御力も人間的に遙かに優れた状態になってるってことだろう。

 {{暗黒物質ダークマター}}

 せっかくエネミーが名付けたんなら使ってみるか。

 Ⅲの手のなかにはちょうどバスケットボールほどの黒の球体が出現した。

 俺はそれをドッジボールの要領で遠隔操作で投げた。

 結構簡単にモナリザの体の中心に命中した、視力も優れてる。

 奴の体に当たった感覚も残ってた。

 暗黒物質ダークマターが衝突した瞬間、モナリザは飛び散るように消えた。

 あっけない、真野絵音未がブラックアウトしたときもこんな感じだったけど。

 それでも油断大敵、気は抜けない。

 消えそうな暗黒物質ダークマターに向かって、俺はこの位置で右フックした。

 よし、Ⅱのほうも。

 俺はいま二体のを操作できてる。

 混線して絡まるかとも思ったけど、それぞれを独立して操ることができる。

  {{暗黒物質ダークマター}}

  Ⅱの暗黒物質ダークマターを残りのモナリザに向かって投げる。

 ものすごい速さでモナリザに向かって直進してった、と同時に最初に放った消えかけの暗黒物質ダークマターがUターンしてきた。

 やっぱり、なんかできる気がしたんだよな。

 暗黒物質ダークマターの遠隔操作も。

 暗黒物質ダークマターは、そのままモナリザの前後を挟み撃ちにした。

 これが死者の反乱のときにできてれば、寄白さんも九久津もあんな怪我しなくて済んだのに……。

 よしっ!! 完全撃破。

 社さんが弦で巻いてくれてるから、モナリザのトゲを気にせずに戦闘に集中できた。

 これでモナリザ五体をみんなで退治したことになる。