第20話 七不思議の存在理由

「へ~実際はこんな造りなのか。それで四階を隠す理由は?」

 「四階はアヤカシの溜まり場になりやすく、生徒たちを寄せつけないため」

 九久津は深刻そうに話すと、とたんに声の質もトーンダウンした。

 筆記用具とノートをしまう手も、どこか鈍ったようだった。

 「それであんなに厳重な防火扉と螺旋階段があったのか?」

 「そう。そしてもうひとつ重要なこと。学校の七不思議のひとつである《段数の変わる階段》なんだけど……」

 「《段数の変わる階段》が、どうかしたのか?」

 「あれは万が一あの螺旋階段が発見されても、うかつに近寄らせないための抑止効果。……と、実際は“四階建て”の校舎を“三階建て”だと有耶無耶にするためのささやかな抵抗」

 えっ、驚いた?!

 九久津ってイケメンのうえに、やっぱり頭脳もイケメンじゃないか。

 ハイスペックにはハイスペックのCPUが乗ってる。

 ノートを見ただけでも一目瞭然だったけど。

 憑依体質のイケメン。

 能ある鷹は爪を隠すか……?

 とは言え、これは九久津ひとりで考えたことじゃないだろうけど。

 「まあ、それだけで全員が引き返してくれるとは思ってないけどね……子供だましな部分もあるし。本来、学校の怪談ってのは人を遠ざける嘘だったんだよ」

「そうか?! 興味本位で近づく人よりも気味悪がって逃げる人のほうが多そうだもんな!!」

「そういうこと。数の問題。世間に広まる迷信のたぐいも、じつはそうだったりする。“夜に爪を切ると云々うんぬん”も深爪予防だし。むかしは小さな傷からでも化膿して命を落とす人も多くいたから。七不思議製作委員会は生徒たちソレらを刷り込む役割を担ってる。もともと六角市はオカルトの根付く街でもあるし」

 「じゃあ寄白さんが、あの演説時に、《段数の変わる階段》について好き勝手言ってたのも?」

 俺は九久津と寄白さんの支離滅裂な掛け合いを思いだした。

 こんなキレ者だから委員長のポストを任せられてるんだ。

 「まあ一応は階段の話に目を向けてもらうためでもあるけど。ツインテール時の美子ちゃんは不思議っ娘だから、天然な部分もあるかな~」

 「そっか。でもどうして俺は四階に誘われたんだ?」

 「それは、えっと……なんていうか……」

 九久津は言葉を濁した。

 困った表情をしながら頭をかいて目を泳がせた、そこで必死に答えを弾きだそうとしてる。

 九久津が悩むなんて、よっぽどだな。

 「もしかしてシシャが関係あるのか?」

 俺が確信をついたかもしれない・・・・・・質問をしたとき、後方からコツコツと乾いた靴音が近づいてきた。

 この歩きかたとリズムは……。




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