第2話 バス通学

 バスは時刻表通りにやってきた。

 一秒単位の誤差までをカウントするならプラスマイナス三十秒ってとこか。

 日本人の国民性がよく表れてる。

 俺は子供の頃のように一番後ろの左端に座った。

 窓際の後部座席はどこか落ち着く、シートの感触と匂いがとても懐かしい。

 日本に生まれたことに感謝しながら流れる景色を眺めた。

 大型スーパーがあって、そこから不等間隔で大手家電量販店、家具屋、百円ショップ、ドラッグストアとさまざまなショップがつづいた。

 繁華街を抜けると一般家庭の立ち並ぶベッドタウンへと突入する、建て売り住宅のためテンプレートの民家が連なってる。

 見慣れない街並みがつづく……かと思ったが同じ市内での転校だ、なんとなく見たことある景観でたいした驚きもない、ただ通学ルートが変わっただけだった。

 ……とは言え、むかし空き地だった場所がソーラーパネルになってたりと、すこしは新発見もある。

 最近は自然エネルギーでの発電は当たり前なのかもしれない。

 俺はある停留場で前方の席へと移動した。

 バスの運転手は白い手袋でハンドルをしっかりと握って安全運転をしてる。

 その手袋にも意味があって、滑り止め手汗の防止、清潔感などの理由があると聞いたことがある。

 運転席の後ろには細かい網目の防護柵が設置されていて、これは防犯上の理由で後方部からの襲撃を防ぐ目的らしい。

 その防護柵の網目を利用し、天井から二十二型の小さな液晶テレビが吊るされてた。

 『――つづいては株式会社ヨリシロのお家騒動です。前社長は数ヶ月前に解任動議を提出され、実子である娘の寄白繰よりしろたぐり氏にその座を奪われました。この社内クーデターの理由は依然として不明で、後味の悪さを残したままでの決算発表になりそうです――』

 早朝のため乗客は、お年寄りと俺のような学生が多い。

 年配の人たちはそんな地元のニュースに見入ってる。

 「ヨリシロって上場企業なのにね~」

 「六角市には関連会社がたくさんあるじゃろ?!」

 「株価に影響するんだろうかね?」

 「あれだけの会社なんだから、そりゃあ影響するじゃろ?!」

 「この町発祥でいまも六角市に本社のある、一部上場企業なんてヨリシロだけなのにね~」

 「わざわざ法人税を払うために、未だに居てくれてるのにのぉ~?」

 「早く落ち着けばいいね~」

 難しい経済用語が飛び交ってる。

 俺のような学生たちは、なんの気にも止めず、スマホを見たりポータブル音楽プレーヤーで曲を聴いてた。

 「この曲いいよね~?」

 「タイトルなんだっけ?」

 「ペンタゴン」

 「あっ、そうだ。そう!! 五角形って意味だっけ?」

 「そうだよ。でもこの曲は人を守護するペンタグラムの五芒星から名づけたってラジオで言ってたよ~」

 「へ~?!」

 イヤホンからシャカシャカと音が零れてきた。

 これを雑音、騒音だと嫌がる人も多いだろうけど、いまの俺には気を紛らわすのに、ちょうど良いい。

 慣れない学校に行くのは、やっぱ緊張する。

 バスは十五ヶ所ほどの停留所で停車し、そして最終目的地である“六角第一高校前”の看板が見えてきた。

 ベテランの運転手は徐行し左折すると、カチカチというウインカーの点滅音が車内にも聞こえた。

 ――プシュー。と空気の抜ける音がすると、ガタンガタンと折り畳み式扉が二段階でたたまれた。

 乗客が降りるより早く外気が車内へ乗り込んできた。

 外の空気は少し冷たく感じる。

 バスは定刻通りに六角第一高校前に到着した、精算を済ませた、俺の目と鼻の先に六角第一高校の校舎が映える。




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