第199話 Viper Cage ー蛇の檻ー

頼んだ飲み物が、それぞれの目の前に並べられてる。

 このカラオケ店に入ったのは歌うためじゃなくて、人から隔離された場所で会議をするためだ。

 ここで校長が今日の本題を話しはじめた、あっ、さっきのが本題じゃなかったんだ……ってあれは九久津の話が弾んだだけか。

 そもそもエネミーがパフェを食べたいってことからはじまって、今日、校長がたまたま合流することになったんだ。

 俺たちは校長を中心にして、その校長を囲むようにカラオケ特有の硬いソファーに座った。

 飲み物のグラスが汗をかきはじめて結露のようにテーブルを濡らしてる。

 校長はスーパーの試食販売する店員のように自分のスマホをかざした。

 「みんな、この画面見ててね」

 誰ともなく――はーい。って声が重なる。

 まるで高校の授業のようだ。

 校長が持ってるのはいつも使ってるスマホだ、注目すべきは機種本体じゃなく画面のなかにある。

 そこには【Viperブイアイピーイーアール Cageシーエージーイー】というヤケにかっこよさげな単語があった。

 えーと、これはどういう意味だ?って思うのと同時に九久津が一言。

 「直訳で蛇のおりってことでいいですか?」

 「まあ、そうね。Viperヴァイパーは蛇。正式にはクサリヘビだけどそれにCageケージは鳥カゴって意味。う~ん、そうね」

 校長はすこし考えながら画面をタップして、なにかの文字を打ち込んだ。

【Viper Cage -蛇の檻-】

 ”蛇の檻”ってタイトルが加わった。

 「ViperCageヴァイパーケージ。蛇の檻。これを正式タイトルにします」

 それは校長の案で電子共有ノートを新規作成し、蛇についての情報を共有するということだった。

 電子共有ノートとはクラウドシステムとチャットアプリを合体させたようなシステムで当局関係者なら誰でも使えるものをアレンジして使用するということだった。

 アプリからログインすれば書き込みの情報が共有できるうえに、基本的な画像ファイルや音声ファイルなどもアップできる仕様になってる。

 もちろんその添付ファイルも共有できる、つまり一つのファイルをアップロードすれば参加者全員がダウンロードすることも可能だ。

 急ぎのときには文字以外のファイルを交えて会議ができるというメリットもある。

 参加者の人数も校長が制限して、十人以下のグループが参加できるようにした小規模電子共有ノートが【Viper Cage -蛇の檻-】だ。

 じっさいは校長が作ったというよりも、カスタマイズしたというほうが正しい。

 まあ、早い話が、蛇についての情報交換をするクローズドの電子掲示板BBSってことだ。

 校長いわく――そう遠くない日に蛇は各国当局の共通の敵になる。

 このノートをたとえ総務省にのぞかれても、それはある意味当局への情報提供になるだろう。

 それは俺たちにとってもメリットだ、なぜなら蛇の存在を国に認めさせることが蛇、退治への近道になるからだ。

 当局側あっちへの情報源にもなってウィンウィンの関係にもなるだろう。

 まだ存在が確定したわけではないらしいけど、フランス当局の能力者でトレーズナイツの一員であるヤヌダークもその方向で動いてるということだった。

 世界の脅威になるのも時間の問題か。

 そんな気はするけど俺らはまず六角市を守らないと。

 身近なモノが一番大事だ、それこそ俺らに世界なんて大きすぎる。

 そのために各国に当局があるんだろうし。

 【Viper Cage -蛇の檻-】の参加メンバーは校長、俺、九久津、寄白さん、社さん、エネミーの六人、まあ、小さなコミュニティだし、ほかにメンバーもいないしこんなもんだろう。

 エネミーはちょっと心配だけど、しっかりしてるときはしっかりしてるから大丈夫だよな?と思う。

 校長の誘導で、さっそくみんなでアプリを入れて同時にログインした。

 それぞれの表記がこれだ。

 【沙田雅】

 【寄白繰】

 【九久津毬緒】

 【寄白美子】

 【社雛】

 【真野エネミー】

 みんなのフルネームが表記されてる。

 ――多面体だからこそ世界は成立しているんだよ。なんとなく近衛さんの言葉を思いだした。

 人もそれぞれだよなって……。

 ここに名前のあるみんなは、外見から性格までまるで違う、それはそれぞれの能力を考えてもそうだ。

【Viper Cage -蛇の檻-】に誰かが文字を打てば、みんなでその文字を読むことができる、つまりはみんなで同じ画面を見れるってこと。

 いまの若者おれたちが使用する無料通話アプリなんかと違って、当局のサーバーを使用してるからセキュリティもしっかりしてる上に、俺らが編集した内容も公のデータとして応用できるメリットもある。

 どうしてオフィシャルのデータになるのか、それは参加者がみんなアヤカシの関係者だからだ。

 と言っても、まだ当局公認ではなく、あくまで俺らだけの情報共有アプリなんだけど。

 この説明の大半は、校長が言ったことを俺なりに解釈したものだ。

 なんか秘密の部活みたいでドキドキする、これ学生だったらみんな憧れるだろ。

 こういうのでアヤカシと戦ってるって。

 さっそく文字が打ち込まれた。

 【真野エネミー】:このウーロン茶、飲んでもいいアルか?

 ……エネミー。いきなりそれかい!!

 口で言えばいいものを、文字にするって、エネミーならやって当然な気がする。

 いっせいにみんなの笑い声がもれた。

 

 




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