第193話 ゾーン・オブ・デス

「現にアメリカのイエローストーン国立公園にだって殺人罪に問われない【ゾーン・オブ・デス】と言われるエリアが存在します。つまり法の抜け道です。法が適用されなければ誰も動かないですからね」

 「さっきのナイフはそういうこと。私がその【ゾーン・オブ・デス】でナイフで刺されても誰も動かない。警察もこないってことですね?」

 「そうです。救護はされるでしょう、けれど罪を裁く機関は動きません。いえ、動くには動きますが州法の違いで矛盾が生じてしまうんです。法なんてのは所詮は人が決めたルールです。古くから使われてるから信頼度が高いくらいに曖昧な」

 「そっか。でもジーランディアそんなばしょなら世界各国のジャーナリストたちが騒いだり、偶然に発見されることもあるんじゃないんですか? ときにジャーナリズムが国家に勝つこともありますよね?」

 「発見されなければいいんです。偶然にさえ逆らったあの場所・・・・はその存在さを許されていませんから。まず、彼等は人工のジーランディア島を創ったあとに周囲の海流から変えました」

「そんなことがで、き」

(いや、科学の力と様々な能力者がいればできるか)

 「海流を変えたのは、どんな潮流ちょうりゅうに乗ろうとも漂流物を島に近づけさせないためです。すべての海流を外向きにしたんです。これによって偶然に流れ着く物は皆無です。つぎに上空からの発見に備えて、島全体を風景に溶け込ませカモフラージュさせました、同時に衛星にも映らないようにもしています、当然地図上にジーランディアは存在しません。このカモフラージュ技術に心当たりがありませんか?」

(えっ、周囲の景色を溶け込ませる技術? あ、あれっ? 私、知ってる)

 「あっ、あります。心当たりあります。九久津くんのです。あの技術は外気温との温度差もなくせるんですよね、確か」

 「そうです。六角市の忌具保管庫はその技術を用いています。というよりジーランディアを隠すための技術をほかにも応用したと言ったほうが正しいですね。優れた

技術はみんなで使う。人類発展のキーポイントです。そこは開放能力オープンアビリティにも通じるものがありますよね」

 「それは間違ってないと思います。人のためになる技術ならばみんなでシェアする」

 「繰さんも人がいいですね」

 戸村はグラスの水を口に含んだ、つられて繰も喉を潤す。

 「そのためジーランディに入島できるのは各国当局の許可を受けた能力者だけなんです」

 「なるほど。なかにはなにが?」

 「そこは私でも・・・わかりません」

 このとき繰は戸村のおおよその立位置を把握した、ジーランディアの成り立ちを把握しているけれど、なかになにがあるかまではわからない。

 つまり入島したことはないのだと、そうなるとそれなりに当局の情報を得る立場でいながらも入島を許されるような役職にはいない、それが繰が見立てた戸村のポジションだ。

 「つまりですね。ジーランディアこそがこの世界の負力の元凶なんです」

 「……多くの負力の発生源がそこだと」

 「はい。そして、これは六角市に関係あることなのですが」

 「は、はい」

 繰は上半身を前のめりにさせる。

 (そっかこれを私に伝えたかったのか……六角市、私たちが生まれた街)

 「ジーランディアの莫大な負力は不可侵領域に流れています」

 「う、うそ」

 「本当です。残念ですがそれは揺るぎない事実です」

 「それは意図的に誰かが流してるとかですか?」

 「いいえ」

 戸村は首を横に振る。

 反射的なその行動は、繰の言葉に本当に反射・・・・・したからにほかならない。

 「ジーランディアの負力は世界中に流れています、が、六角市はその地形ゆえに負力や瘴気を大量に留めてしまうんです」

 (不可侵領域の言い伝えってそれを伝承してたんだ。ってことは産業革命の時代ときにジーランディアが造られ、それと同時期に六角市の不可侵領域ができあがったってことね)

 「だから私たちは不可侵領域のことを曖昧に聞かされてたんですね」

 「だと思います。というよりその事実は知る人物があまりいないからなのかもしれません。現在、国交省が不可侵領域に繋がる場所を地下から探っているようです」

 「あっ?! もし、地下からでも瘴気をじょじょに発散させることができたら、必然的にアヤカシ、忌具、魔障発生の供給源を絶つことができる」

 「そうです。不可侵領域をなくせばアヤカシ、忌具、魔障の絶対数は激減すると思います。人類がいる限り根絶は無理ですが」

 (また繋がってきた)

 繰は戸村の話を整理する。

 ジーランディアの負力が不可侵領域に流れる、いまその瘴気は守護山や結界によって浄化されてる。

 ってことは間接的に、私たちもジーランディアの影響を受けてるってことね、いや世界中の人がなんらかの影響を受けてる。

 アンゴルモアもその莫大な負力によってジーランディアで発露したそう考えれ辻褄が合う。

 負力はアヤカシの源。

 忌具も、魔障に関してもそうだ。

 六角市に絞って考えればシシャ、うちの高校の四階のアヤカシ、それにときどき街にでるアヤカシたち、動き回ってるという忌具、戸村さんの仕事である魔障の治療。

 この世界の輪郭が見えてきた……。




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