第186話 能力【ドール マニュピレーター】

いま、この瞬間だけは休戦日みたいなものだ、誰が決めたわけでもないけど俺らが勝手にそう決めた。

 せっかくの機会だからゆっくりしよう。

 四階のアヤカシは【学校の七不思議】という種類のために、主な活動時間は放課後のが多い。

 なにかあれば、そのときは亜空間を使ってショートカットすればいい。

 そのなにか・・・にどうやって備えるか、それは社さんの式神と【ドール マニュピレーター】の能力だ。

 四階に異変があれば、蜘蛛の巣のように張り巡らしたいとが、直接、社さんに知らせるという。

 あのバシリスクの出現を捕捉した力だ、精度は相当高いだろう、でも怪我の影響があっていまでも本調子じゃないと校長が心配してた。

 能力者とは常に危険と隣り合わせ、そんなことは俺だって知ってる……つもりだけなのかもしれない。

 【走る人体模型】

 【ストレートパーマのヴェートーベン】

 【段数の変わる階段】

 【誰も居ない音楽室で鳴るピアノ】

 【飛び出すモナリザ】

 【七番目を知ると死ぬ】

 六角第一高校の七不思議は、七不思議でありながら実質は六つだ。

 【走る人体模型】は、あれからまた廊下を走ってる、けど前のやつとは違って寡黙な感じで黙々と走るタイプだ。

 寄白さんは、そいつをそのまま放置してる、いや見守ってるって感じかな?

 【ストレートパーマのヴェートーベン】

 これは音楽室の絵画があるやつなら【ヴェートーベン】じゃないやつにも入れ替わる、だから【バッハ】も出現した。

 けど俺が腰を打った日に退治した。

 そのあともまた、【ストレートパーマのヴェートーベン】が出現した、最初のときと同じようなやつだった、それはどういうことかって言えば、見かけも性格も同じ気が……人体模型は同じ人体模型でも、いまのやつと前のやつとでは、まるで違うのに……。

 【段数の変わる階段】はとくになにもない。

 そもそもそういう噂だけだ。

 【誰も居ない音楽室で鳴るピアノ】

 こいつだけは、唯一、俺が転入してから同じ固体だ、いわゆる生き残りだ。

 【飛び出すモナリザ】

 ブラックアウトして寄白さんと九久津に倒されてからは、出現してない。

 【七番目を知ると死ぬ】

 これも物理的にどうこうなるわけじゃない、噂だけ。

 俺は寄白さんとエネミーの三人で、一足先にスイーツパーラーに入った。

 校長はまだ着かなさそうだし、九久津からの連絡はいまだにない、社さんは本屋から直接ここにくるという理由で店に足を踏み入れた。

 ホイップクリームのような甘い匂いがする、店内はカラフルな小物とポップな感じの造りで女子受けは良さそうだ。

【フォトジェニックな”マル秘特別パフェ”】という、いかにもなフライヤーもあるし。

 現に九割は女子だ、男の割合低し。

 さらに【無農薬と産地直送】の赤文字が目立つ、これも健康にこだわる人の食いつきがよさそうだ。

 この店だけはさすがに近衛さんとは無縁だろう。

 一階は対面販売のレジとイートインスペースがあって、二階は一階よりも大人数で座れる団体客用の席がある。

 社さんとエネミーがワイワイしてるから、俺は店の端に寄って店内を眺めてた、そんなときに四階のことが頭を過ってそのことを考えてた。

 「沙田、上行くアルよ」

 「あっ、ああ」

 エネミーは社さんと連絡をとってて、もうこっちに向かってる途中らしいから俺たちは二階上がった。

 そこも人でまあまあ混雑してる、俺たちは対面で六人座れる席を選んだ。

 俺は奥に追いやられた、が、窓側だから解放感がある。

 店名が反転したカッティングシールが窓ガラスに貼られてた、これを外側から見るときちんと店の名前が読めるようになるってことだ。

 俺らがいま座ってるのは、ひとつのテーブルを囲んで対面で六人が座れる、つまりは三人座って、テーブルを挟んで、また三人座る、そんな窓側の席だ。

 当然、大人数用の席だから、座席もテーブルも大き目に作られてる。

 カッティングシールの文字の隙間から路面を眺めると、白と黒のモノトーンのタイルブロックと俺らの足元を歩く人の頭上が見えた。

 いろんなショップの紙袋を持った、頭のてっぺんがどんどん進んでった、これから

 帰るのか、またべつの店にいくのか、あるいはなにかを食べに行くのか。

 なんにしても道行く人は楽しそう……だ、見かけは。

 心はわからない、辛いから気晴らしのために街にきたって人もいるだろう。

 と、思ってると、目線の上に雲が流れてきた、ものすごい速さで黒い雲に変わってった。

 暗雲が立ち込めるとはあの様子を言うんだろう、けど、この場所からずっと離れたてる、ここには影響がなさそうだ。

 「アニメだと真っ黒な曇り空のアップがきたら悪いこと起こるアルよ~」

 俺の横にいるエネミーは俺に近づき同じ雲を見てた。

 またアニメ演出方法か、縁起でもない。

 寄白さんはラミネート加工された二つ折りのメニュー表を吟味してる。

 「それはアニメのなかの話だよ」

 「わからないアルよ~」




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください