第145話 星間エーテルとミッシングリンカー

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 ・まず能力者になると身体能力が飛躍的にアップする。

 (格闘家、ボクサー、レスラー、スプリンター等々さまざまな分野のプロの最大値と同等の能力を自在に使いこなせるようになる。ただし人それぞれの資質によって俊敏性が一番だったり、筋力が一番だったりする)

 ・能力者の極限の集中状態はゾーンと呼ばれる。

 ・命の危機を感じると、自己防衛のために星間エーテル(魂)が抜けだすこともある。

 (それを条件反射でコントロールできる能力者もいるらしい)

 ・星間エーテルが肉体からの開放された場合、そのまま消滅するものもあれば宙を漂いつづけるものなど、その過程はさまざまで仏教用語で中有ちゅううと呼ばれる状態を維持する。

 ※四十九日しじゅうくにちで転生するという意味ではなく、魂が浮遊しているということ。

 ・信託継承は星間エーテルによるもの。

 ・星間エーテルは希力と負力と物質的には同質で星間エーテルとも結合する。

 (これによって能力者は個別の力を発揮できる)

 ・希力が強いと星間エーテル、つまり魂は清くなる。

 ・負力が強いと星間エーテル、つまり魂がけがれる。

 ・星間エーテル、純粋な魂そのもの呼び名。

 ・希型星間エーテル、希力の量が多い星間エーテル。

 (歴史上偉人として扱われる人物の転生体は、希型星間エーテルを宿していることが多い)

 ・負型星間エーテル、負力の量が多い星間エーテル。

 (歴史上、悪名高い独裁者などの転生体は、負型星間エーテルを宿していることが多い)

 ・転生のパラドックス

 過去がどんな偉人でもどんな悪人でも、転生後の時代によっては、改心または心変わりがあったりする。

 ●星間エーテル移動(外側)

 ・負型星間エーテルが人の外側にまで及ぶと=呪縛、怨念などとなる。

 ・希型星間エーテルが人の外側にまで及ぶと=守護霊などとなる。

 ●星間エーテルの移動(内側)

 ・信託継承は、この現象によるもの。

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 ボードは三列にわたって文字でびっしりと埋め尽くされてた。

 俺は本当にこういう学問を習いにきてるみたいだった。

 只野先生は、ホワイトボードを前にしてさらに話を弾ませる、担任の鈴木先生もときどき授業中こんなふうになる、たぶんあれ・・もゾーンだ、違う意味で。

 「レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼の職業は芸術家、発明家、画家、建築家、数学者、彫刻家、音楽家、地質学者、解剖学者などさまざまあるよね?」

 「ダ・ヴンチって芸術家や医者、音楽家は知ってましたけど、そんな幅広い分野までなんですか?」

 「そう」

 只野先生は人差し指を山にして、コンコンとボードを叩く。

 「僕はこう思うんだ。ダビンチは転生を繰り返し、その都度各分野のスキルを積み上げてきた。それがこれだけ多岐に渡る突出した才能と知識」

 あっ?! 俺も思ったことがあった前世でピアノが弾けたら、今世でも案外簡単にピアノを弾けるんじゃないかって。

 俺はまったく弾けないから、どうやったらあんなに指が動くのかわからない。

 最初は指一本で鍵盤を叩いて、それが少し上手くなって人生を終える、つぎの人生は子供の頃から五本指で弾けて人前で曲を披露するくらいになる、つぎの人生は作曲までできて音楽家になる、最後は著名なピアニストとして脚光を浴びる、簡単に言えばそういうことだ。

 只野先生のこの理論はきっと正しい、素人の俺でもそう思う。

 子供の頃から不思議だった、登山家はどんな契機きっかけがあればエベレストを目指すのか?

 そもそも、どうしたらあんなに険しい山に登ろうと思うのか。

 最初はほんのささいなハイキングだったものが、なんども転生して最終的には、その魅力に憑りつかれ最高峰を目指すってことだろう。

 有名な問答があったよな。

 ――山に登る理由。

 ――そこに山があるから。

 野球、サッカーなんかのスポーツ選手、デザイナー、音楽家、文学、絵画、将棋、その時代に現れる天才・・は、そういう人たちなのかもしない。

 転生を繰り返して自分を高めていく。

 なんにだって当てはまる理論だ。

 なら人は産まれて死んで終わりじゃない、つぎに産まれるときには前世のコツもわかるしどこで失敗したのかもわかってる、つぎに生かすことができる。

 生物の互換性があるなら途中、動物や植物を挟んで休憩したっていいってのは、このことか。

 前世は動物だったとかの占いのたぐいの説明もつく。

 只野先生は新しい魔障の治療法を確立させて大勢の人を救った人だ、この理論も誰かの新薬なのかもしれない。

 「ルーツ継承は血脈によって継ぐ能力の遺伝。信託継承は外部からの魂の受け渡しってこと。あっ、ルーツ継承ってのは」

 「それは教えてもらいました。けど、僕は能力者なのにルーツがわからないんです」

 「そうなの? じゃあ、ミッシングリンカー?」

 「ミッシングリンカー?」

 「そう。いつどこで能力に覚醒したのかわからない人の総称。ミッシングなんて呼ばれてるけどそれは言葉のあやでね」

 「……?」

 「ミッシングリンカーはミッシングリンクのこと。つまり連続性のなかにある欠落点。沙田くんのようにどこで能力に目覚めたかわからない人を言うんだけど」

 「は、はい」

 「ミッシングリンカーは三つのタイプに大別されるんだよ。タイプCとタイプDとタイプG」

 「じゃあミッシングリンカータイプCとミッシングリンカータイプDとミッシングリンカータイプGがあるってことですか?」

 「そう」

 「ただね。タイプDに関してはデフォルトの頭文字のDをとってるからルーツのはっきりしたふつうの能力者ってこと。まあミッシングリンカー、イコールどこで能力に目覚めたかわからない人なのにルーツのはっきりしているタイプDがつくというなんともわかりづらいネーミングになってるけどね」

 「なるほど。ってことは能力者はほとんどがタイプDで、それ以外がタイプCかタイプGになるってことですか?」

 「そういうこと。まあ、これに当てはまらなくても自分がファーストルーツになることもあるし」

 「そうでした」

 そっか、そうだ。

 一番最初に能力に目覚めるのがファーストルーツ。

 ルーツが判明してるのがミッシングリンカータイプDなら、ファーストルーツに目覚めた能力者もそこが始点だからタイプDってことか。

 「じゃあタイプCとタイプGの違いはなんですか?」

 D以外って時点で必然的にもっと別の力を持つ能力者だよな。

 「そこはブラックボックスになっていて当人たちしかわからないだよ。まあタイプ別になってるってことは、なにかしらの共通点で括られているんだろうけどね。推測の域はでないかな、僕は能力者でもない、ただの人・・・・だから」

 「そうですか」

 只野先生は非能力者って近衛さんが言ってたな。

 それなのに魔障専門医になったなんて、ますますスゲーな。

 「まあ。こんな感じかな。魔障による影響は現代医学での説明は難しいからね」

 「そ、そうですよね」

 「それとこれが役に立つかわからないけれど……」

 「なんですか?」

 「アヤカシの闇落ち。ブラックアウトってあるでしょ?」

 「はい」

 「ホワイトアップに対する反対は、本来ブラックダウンなんだよ」

 「なにか違いでも?」

 「ブラックアウトとは外側に行くこと。厳密に言うならホワイトアップ状態とブラックダウン状態の外側に行くことを言う」

 「じゃあ、ブラックダウンであるならまだ元に戻る可能性があるってことですか?」

 「そう。限りなく確率は低いけどね。この精神状態は能力者にも当てはまるから覚えておくといいよ?」

 「はい」

 魔障医学……奥が深い。

 こんな複雑な学問をマスターしなければ、魔障専門医にはなれないんだからどんだけ難題なんだよ。




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