第14話 養護教諭

うわぁ?! 今度はスゲー巨乳美人がきた。

 その女の人はスレンダーな足に細身のツーピーススーツで、やけに胸が目立つ、というか自ら強調しているようだ。

 白と銀の中間の気品が漂う服装だった。

 一本一本が絹糸のようにサラサラの髪、顔も小さくて、ぱっちり二重の大きな目、唇はリップ効果なのかぷるんとしてた。

 この人もなんか霊的なものに変化へんげすんのかな?

 現世の未練を断ち切れない、憐れな地縛霊とか?

 「あっ、校長先生」

 九久津が頭を下げた。

 「こ、校長? こ、この、お姉様が?」

 驚いて俺は九久津に聞き返した。

 「そうだよ」

 ――当たり前だ。という感じで半分にやけ顔の九久津。

 こ、こんな人が校長だと、ずいぶん時代も変わったな、ふつう校長と言えばひかえめグレー系スーツで、頭部というフィールドにやや難のある、おっさんのことではないのか?

 「そして美子ちゃんのじつのお姉さん」

 「えぇぇぇ!!」

 それを早く言えっつーの!!

 転校してきてベストスリーに入るほど驚いた。

 寄白さんと胸の大きさが正反対だ!!

 あっ、これもいま、驚愕ベストスリーにランクインした、即時更新、上書き保存、心のクラウド転送っと。

 「私は寄白繰よりしろたぐり。キミの転校初日美子に情報を教えたのは私。すぐに逢いに行ったみたいだけど?」

 寄白さんのカワイイ声とは反対で大人の女の人の声だ。

 このCVは、これはこれで良い感じだな。

 「ああ~それでですか?」

 なるほど転校初日の謎がようやく解けた。

 だから待ち伏せしてたように寄白さんが出現したのか、姉妹だからすぐに話が伝わるってことね。

 てか、お姉様見た目は二十代ですけど、民間人校長だから年齢制限はないのか?

 「ねえ、美子ってカワイイでしょ?」

 「えっ、あっ、はい」

 なんてド直球なことを、だが俺は何度もうなずいてた。

 と言うかこの場合はうなずかないという選択肢はない。

 仮に、仮にだ、カワイくないという結論でも、首を横に振ることはカワイイを否定することになる。

 そうなると相手は傷つき空気が悪くなる。

 ……と理屈をこねたが、寄白さんに怒られるのが怖かっただけだ。

 まあ、いま、自然にうなずいてたってことは、本心でカワイイと思ってるってことだけど。

 「仲良くしてあげてね?」

 「もちろんです!!」

 「私、養護教諭も兼務してるからよろしくね~。つまりは保健室のセ・ン・セ・イ!!」

 甘い声でウインクしながら俺の手を握った校長。

 握手しながらも見とれてしまった、さすがは魅惑の保健教師。

 お姉様の指はスラっとしてきれいだ、これはお姉様か寄白さんか選べない。

 これが俗に言う両手に花というやつか、しかもどちらも高嶺の花じゃねーか。

 そ、それに保健の先生ってことは《保健室パンツ》の可能性があるということ……あ、ああああぁぁぁぁっ?!

 保健だよりの切り抜きはこの人か~?!

 そりゃあリアルトリミングされるはずだ~!!

 寄白さんは俺にも目もくれず校長のもとへ向かった。

 「ちょっとお姉?! なんかあいつらホワイアップしてたけど?」

 「そうみたいね。まあ六角市のバランスが崩れてるからね~気をつけて」

 「調和が乱れるとあんなふうになるってこと?」

 「ええ、まあね。けどいまの美子たちならどうってことないでしょ?! あのノリはウザいけど」

 俺はその会話を遮って校長に質問した。

 「あのホワイトアップってなんですか?」

 「簡単にいうとアヤカシのそう状態。テンション最高潮ってことよ」

 「アヤカシとはさっきの人体模型とヴェートーベンですか?」

 「そうよ。まあ学校の七不思議に代表されるような怪奇現象や幽霊、妖怪、魔物、魔獣なんかを、全部ひっくるめてアヤカシと呼んでるの」

 「へ~知らなかった」

 なぜか感心してしまった。

 そんなのを相手にしている人たちがいるんだ。

 「アヤカシの発生源は負の感情と言われててね、世界各地で出現するの。それは民話なんかにでてくる有名な妖怪や近年名を馳せたオバケなんかも、すべてて根源は同じなのよ」

 うちのご先祖様もむかしガシャドクロと戦ったことがあるとか言ってたけど? あれも有名妖怪だよな。

 六角市以外でもオカルトな都市はたくさんあるってことか。

 「んで、もちろんシシャもアヤカシに含まれるわ。つまりアヤカシは人の負をベースにしてさまざまな形と能力を備えて具現化するってこと。そして」

 校長の顔が引き締まった。

 ――そして。のあとになにかを言おうとしたときに寄白さんがすぐに遮った。

 「お姉今日の服少し派手ぇ?!」

 “そして”に続く言葉はとても大事なことのような気がした。

 校長は寄白さんの目をじっと見ると、言いかけた言葉を飲み込んだ。

 飲み込んだモノがとても重大なことなのは間違いない、それは校長のかげった表情で察しがついた。




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