第127話 You are ”シシャ”

 「うちは真野しんのエネミーアルよ」

 ええええええええええええ?!

 真野ってその名字は紛れもなく、そ、そうだよな絶対そうだよな。

 シシャだ、新しい死者。

 そっか、深く考えればそうか。

 寄白さん最近辛そうだったからな。

 いつまでも、あのままにしておくことはない、なんたって寄白さんには負力の受け皿が必要なんだから。

 けどいつのまに誕生したんだ? ……神社であの儀式をやったのか。

 しかも今度はなぜ外国人?

 そういやいつだったかクラスの話題にも上がってたっけ、外国人のシシャがいるかもしれないって、そ、それがまさか現実になるなんて。

 「でも寄白さんとは顔が違うような気が……? 前の真野絵音未は同じ顔だったよ」

 「美子よりも若干ブスにしたアルよ。けど互換性はあるから大丈夫。まあ下位互換アルけどな。男はちょいブス好きね!!」

 そう言って、その女の娘は頬をふくらませた。

 な、なんて自虐的な。

 よく考えればわかることだ、前死者の真野絵音未はもういないし、同じ顔のシシャがいるのはマズい。

 ただでさえ寄白さんと瓜二つだったんだから。

 そうなると顔は変えないといけない……どころか国籍ごと変えて、前のシシャとの接点を消したみたいにも思える、ほぼすべての繋がりを……消した。

 ただ見た目はぜんぜんブスじゃないし、寄白さんよりすこしハーフに近い顔立ちってだけだ。

 性格は真野絵音未の真逆いったな。

 あの娘はなんつーか、この世界を忍んで忍んで暮らしてますって感じだったもんな。

 陰があるっていうか、いやもともと負力でできてるんだから、そういうものなのかもしれないけど。

 これくらい大げさに変更しなきゃいけないってことか。

 性格はツインテールのときの寄白さん要素が強い、そんなところもなにかの意思を感じた。

 「ということで、うちの正体は」

 エネミー・・・・はいきなり正体を言おうとした。

 まったく隠す素振りもない。

 「い、いや、それ以上言うな」

 シシャ本人が何者か言ったらダメだろ。

 これは俺の意見が絶対的に正しいはず。

 「ふふふ。騙されたアルね? そんなの言うはずないアルよ。バカが!!」

 あ~寄白さんのツンツンが若干混ざったぞ。

 すでに俺は転がされてた。

 「おいその代わり、うちのことバズれ?」

 さっきから気になっていたが、エネミーの一人称がなぜ“うち”なのか。

 それになぜ拡散を希望する?

 シシャはもっと潜めよ、ってお国柄か……そいう仕様で誕生したシシャってことなのかも。

 「それもダメだろ」

 前にですぎ。

 ハッシュタグは#どうしてこうなった。だな。

 エネミーはときどき上から目線、かつタメ口でほぼすべての語尾が“アル”だ。

 まあ、それが新しいシシャなんだろう。

 「それも嘘アルよ。ボーイチェリー?」

 ボーイチェリー? チェリーボーイを反対にした言葉。

 “さだわらし”は貞・童。

 童貞を反対にした言葉だった。

 この考えかたって……。

 エネミーは寄白さんと同じ童貞変格活用のイングリッシュバージョンを使ってきた。

 アーティストのデモテープかっつーの?!

 やっぱり寄白さん(ツンツン状態)と思考回路は同じじゃねーか!!

 ただスラングを逆にしてくるとはさすがは国際派。

 「また。エロいこと考えてるアルか?」

 エネミーを俺の顔を見てニヤリとした。

 なぜかものすごい企みをしてるようだった。

 頬が小刻みに揺れてる。

 「か、か、考えてないし」

 「出会ったときも、うちのちっぱいガン見してたアルね」

 ちっぱいって、そこは自分で認めるんだ。

 けど俺はそんなとこ見てねーぞ、漢字Tシャツの確認をしようとしてただけだ。

 断じてガン見などしてない……って、そもそも漢字Tシャツなんて着てないけどさ。

 「ちちちち、ちがう。あれは漢字Tシャツを」

 「漢字Tシャツ? なにアルか。それ?」

 「あれだよ。日本語ではすこし恥ずかしい意味になる」

 俺が言い訳をしようとするところ

 ――人間の男は半日エロいことを考えてるって言ってたアルよ? と被せてきた。

 「だ、だ、誰が?」

 なんで俺はさっきから、こんなに慌てふためかされてんだよ。

 寄白さんならまだしも。

 ……寄白さんならって言いかたも変か。

 「テレビ」

 テ、テレビっ娘なのか。

 「それはリア充だけだ。リア充だけがエロいことを考えて生きてるんだ。だから、みんなリア充爆発しろって言うのさ。俺みたいな一般人じゃとてもとても。だからリア王になっても、やがて四大悲劇に巻き込まれるんだ……シェ、シェイクスピアの、ね?」

 こ、これで、乗り切れ俺。

 丸め込むんだ。

 「おい。――リア充爆発しろ。はもう古いアルよ」

 「えっ?」

 なんだよその返しは?

 「じゃ、じゃあ、なんて?」

 「ジュウーリア・ハツバククロ」

 ジュウーリア・ハツバククロ? ジューリアは“充”と“リア”を反対にしてリア充か。

 ハツバクが“ばくはつ”で爆発か。

 法則が掴めてきたぞ、けどクロってなんだ?

 エネミーは古文ようなレ点や一二点的な文法で、むちゃくちゃに入れ替えてきた。

 あっ、クロは、黒で、シロの反対か……呪文だな。

 いつのまにかシロが黒に色が変わってるし。

 七不思議制作委員会のときも寄白さんは、黒帯が三段だ、どうのこうの言ってたしな、やはり思考を引き継いでるらしい。

 おそるべし死者と使者。

 おっ、いまさら気づいたけど外国人だと、あだ名感覚で名前を呼べるな。

 俺さっきからずっとエネミーって呼び捨てだ。

 野球とかサッカーの海外選手を呼ぶように“エネミー”って気軽に声をかけられる。

 これは呼びやすい。

 真野絵音未しんのえねみいだったら、漢字が並ぶから“しんのさん”って感じだし“真野エネミー”だと、すらすらエネミーって呼べるこの不思議さ。

 そりゃあ海外の人はフランクなはずだ。

 漢字か片仮名かの違いなのに。

 ……この口にだす言葉の難易度が御名隠みなかくしにも影響を与えているように思えた。

 目上の人を敬称なしで呼ぶのが難しいように。

 言葉の制約はとてつもなく大きそうだ。




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