第124話 日常 

 

ここ一週間校長と同様に教育委員会もバタバタしてる。

 九久津は退院まで、あと数日かかるらしくあれから一度も会ってない。

 寄白さんや校長さえも会えてないと言ってた。

 面会謝絶らしいが、それは怪我が重いとかではなく当局の聞き取り調査が入ってるからだ。

 校長は――どうして独りで戦いに行くの? と九久津がなぜ独りで行ったのかがまったくわからないらしい。

 俺には理解できたどうしてもタイマンでやりたかった九久津の気持ちが。

 校長いわく――そんなときこそ、みんなで力を合わせて戦えばいいでしょ? ってことだ、そこは男女の考えの違いっぽい。

 ただ安全面を考えれば校長の意見が絶対に正しいと思う。

 俺の考えとして――九久津のアニキだって、九久津と同じ立場なら同じことをすると思います。って言ったら校長は百八十度考えを変えた。

 校長は九久津のアニキに弱い。

 そう言った俺はなんか恥ずかしい気持ちになった……。

 寄白さんもシシャを失ってから、体調不良らしくすこし辛そうだ。

 原因は“死者”が消えて、負力の受け皿がなくなったからだ。

 けどここ数日は持ち直してきたような気がする。

 バシリスクがきた同時刻にブラックアウトした人体模型と戦ってたなんて知らなかったし。

 あんな倒れるような状態だったのに……べつの理由でこの街の危険を食い止めてたなんて。

 寄白さんはなにかの裏に隠れてけっこう重大な動きをしていることが多い。

 いちおう影武者かよ?!とツッコんでおく。

 もしかしたら、九久津と寄白さんは阿吽の呼吸でバシリスクと人体模型を二手に分けて倒しに行ったのかもしれない。

 ……六角市は寄白さんと九久津、そして近衛さんに守られた、この街の能力者と当局の能力者に。

 あとは校長が“蛇”という敵の存在の心配をしてた。

 どんな奴なのかはまったくわからないけど、不穏な動きをしてることは俺でもわかった。

 もしそんな奴がいるならなんとかしないと……。

 そのときにきてた救偉人の二条さんが、アンゴルモアの討伐隊の人だと知った。

 四階から寄白さんを担いできたのが、まさか寄白さんの特種校の先生だったとは、しかもこの街を数年間守っていた能力者だった。

 数年間というのは校長と九久津のアニキがバディを解散し、六角市に主力の能力者がいなかった数年間だ。

 そのあとは替わりに派遣されてきた能力者たちが、穴埋めをして、そのあとに寄白さん、九久津、社さんの世代に代替わりをした。

 俺がのほほんと小・中学生活を送ってときにも、やっぱりその人たちが六角市を守ってくれてた。

 俺も早く追いつかないとな。

 ちなみにここ一週間で俺がアヤカシと戦ったのは、たった一度だけだ。

 四階のヴェートーベン、けど前とまったく同じ奴のような気がした……。

 寄白さんがずっと手をださずにその経過を見守ってるピアノは相変わらず低音を鳴らしてた。

 あのピアノも害はなさそうだけど、ブラックアウトしたら鍵盤とふたが口と牙にでもなって襲ってきそうな気がする。

 あとは別案件で六角市南南東、郊外にある廃材置き場に向かった。

 なにか不穏な空気が流れてるということで行ってみたが、茶色に近い黒と黄色の動物の毛が散らばってただけだった。

 あれはなにかの野生動物の毛だと思う、一応当局が調べるみたいだけど。

 九久津が学校を休んでいるあいだ一校では、変な噂が流れはじめてた。

 イタリアサッカー界にスカウトされただとか、ノーベル賞の候補になったとか、芸能界デビューするとか、それはもうムチャクチャな話に展開してた。

 これが尾びれ胸びれがつくってやつだ。

 じっさいはホームルームで担任の鈴木先生が――九久津は急遽約一週間の交換留学に行った。と取ってつけたような理由を言ってた……ってことは代わりに誰かが六角市にきてるってことになるよな?

 そんなのすぐバレるだろう。

 学校の七不思議やこの六角駅の話と同じで当局が流したんだと思ってる。

 当局ならやりそうだし。

 この一週間でわかったことだが校長たちと当局はそこまで仲が良いってわけじゃなかった。

 大人の組織だからそうかもしれないと妙に納得した。

 そんなこととは反対に学校は静かだった。

 今日の理科の授業で習ったXX染色体とXY染色体がとてつもない日常を感じさせる。

 遺伝といえばルーツ継承だよな? と思いつつ黒板を眺めながら、俺は教室の雰囲気にどこかホッとした。




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