第118話 一方的

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 二条は九条のいる診察室を尋ねてきていた。

 髪をかきあげながら、すこし困った様子で話しをはじめる。

 「九条ちょっと聞いてよ?」

 二条は切実そうにしながら九条に手をさしだした。

 ――座って。というジェスチャーだ。

 「ああ。聞くよ」

 九条は自分の椅子に座ると、二条は診察室の壁にもたれた。

 「ありがと。話が終わったら私が“診殺”行ってあげるからさ?」

 「もう。行ってきたよ」

 「ええ?! あの看護師さんの話伝わらなかったのか~ショック」

 「いやいや。戸村さんに話は聞いてたよ。でも色々あってもう行ってきた。だいたい二条はここにくるの遅すぎるよ」

 「ごめんね~。それでさ、近衛の設計で近隣市町村の負力も診殺室に送るパイプラインを通したんでしょ?」

 二条は最近誰とも会話していなかったかのように話を弾ませた。

 「そうだよ。それが今日から稼働してるし」

 「嘘? どうだった?」

 「魑魅魍魎の数が相当増えた。でも国立病院うちで一括処理できることは望ましいな。ほかの人を危険にさらさなくていいし」

 「そうね。ほかでは梵字の札とか清めの塩で、日数をかけて一体一体をゆっくり浄化してるんだからね」

 「ああ。まあ近衛はそういう街づくりが専門だから」

 「それが【都市開発者アーバン・アドミニストレーター】って能力だからね。今日も六角駅で作業してたはずよ」

 「なんで?」

 九条はふしぎそうに問いかけた。

 「ほら。バシリスクのときに“ヤキン”を使ったから、そのメンテナンス」

 「“ヤキン”を動かしたのか。よっぽど切迫した状態だったんだな」

 「だろうね。今回のパイプラインも、“ボアズ”の近くを通してあるって話だったけど」

 「“B”の柱……。その力であらかじめ負力にフィルターをかけるってことか」

 (六角駅前って地下への入り口を確保するために、必ずどこかで工事してるんだよな)

 「そう。近衛ならミスミスそんな危険は冒さないだろうし」

 「建設的な男だからな、やることも性格も含めて。――あっ、【気象攪拌者ウェザーマドラー】に適切な質問があるんだけど?」

 「なに?」

 「空が青く見えるのってなんで?」

 「なに突然?」

 「【気象攪拌者ウェザマドラー】だから訊いてる」

 「う~ん、そうね~。一般的にはレイリー散乱って現象かな」

 「それは夜でも起こる?」

 「もちろん。なんでそんなことを聞くの?」

 「いや、これは患者さんのことだから守秘義務で」

 (九久津堂流が亡くなった日の夜に、そのレイリー散乱があったかどうかを調べれば、九久津くんの“青”への執着に近づける気がする)

 「なら深くは訊かないわ。代わり私の話を聞いてよね?」

 「ああ。さっき聞くって言ったろ。だいたいY-LABになん時間いたんだよ?」

 「まさに時間も忘れてって感じ。それがさ~色々検証してもらったんだけど。研究者たちの総合意見だと、忌具自身が自由にレベルを操作することはないだろうって」

 「二条いま忌具調べてんの?」

 「そう。だから黙って聞いてて」

 「あっ、ああ」

 二条は現状がどう大変なのかを、身振り手振りを交えて話した。

 九条は、二条に圧倒されつつ話を聞くと言った手前黙って聞きつづけるしかなかった。

 「それができるなら、忌具はとうのむかしから、そこらじゅうを自由自在に動き回っていて、忌具保管庫が存在する意味がないって言うのよ」

 (二条はたまにずーと話しつづけることがあるよな。この場合は相槌を打って、ただ聞くだけ。そしてボクが本当に訊きたい疑問にだけ言葉を返そう)

 「忌具がいままでずっと沈黙してたって可能性はないのか?」

 「それもないだろうって。忌具自体は人を襲ったり不幸に陥れるための存在。そんな器用に沈黙を貫いていられるはずがないって」

 「じゃあ何者かの力によって動いたってことか?」

 「そう。そういう能力者がいるんじゃないかって。忌具を操作する」

 「ってことは、その能力者が裏で糸を引いてるってことか?」

 「そうなるかな。忌具を操る能力者なんて厄介よね~。ああ~今日は手詰まりね……」

 九条はここが話の端境期はざかいきだと思い、おもいきって話の方向性を変えた。

 「なあ、二条。話は変わるけど。四仮家先生ってどんな人だった?」




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