第10話 トラップ

どこにどんな教室があるのかその配置はわからないが、廊下の壁の色も素材も一緒だ。

 さらに天井のLED照明まで一緒だった。

 ただ大きく違う点は器具の隙間を縫うように、等間隔で大きなサーキュレーターが設置されてることだ。

 まるで低周波が具現化しそうな大きなプロペラが、同じリズムで回転して、空気を攪拌まわしてる。

 あっ、でも窓がひとつもない。

 うわっ?!

 急に眼球を動かしたから、直接照明で目がくらんだ、反射的に目元を覆った。

 てか、ここで告白が待ってるのか、わざわざ階段を上ってきた理由なんてあるか?

 俺はすこしずつ、指を開いて目をならしたあとに、手をずらして景色を確認する。

 ごくふつうの校舎だ、まあ、学校なんてどの階も同じ造りだよな。

 ってここは最上階?!

 じゃあ三階か。

 ずいぶん階段を上った気がするけど、グルグルしててよくわからない。

 あっ?!

 螺旋階段だから直線に登るよりも距離が長いのか。

 まあ、告白は人気ひとけのないところと相場は決まってる。

 このデジタル時代にメールでもSNSでもない、じかでの告白なんて、なんて古風なんだ、まあそこもプラス要素だけど。

 さらに相手は不思議っ娘、そんな女子の思考回路を俺ごときがわかるはずがない。

 「では、わたくしはお着替えがありますので失礼いたします」

 膝に両手を添えて丁寧にお辞儀をした寄白さんはテクテクと歩いてった。

 「えっ、あっ、は、はい。どうぞごゆっくり」

 うはっ、お着替えか~!!

 女の子はシチュエーションを大事にするからな。

 結婚式だってお色直しをする、それに近い心理状態ってことか。

 いいよ。いいよ。待ってますとも!!

 だがそんな期待はすぐに木端微塵に吹き飛んだ。

 「よう、沙田!!」

 く、く、九久津がいる?!

 な、なんで、けど、そうだよな~そうだよな~どうせ俺なんて、そうさ、こんなオチさ。

 世のなかそんな甘くないよな~。

 「待ってたよ~?」

 俺の肩を組んできた九久津。

 「おっ、おう」

 肩に回した手を振り払おうとするが外れない。

 そうだこいつはソフトマッチョだった。

 は~。

 九久津まで、いったいなんなんだよ。

 しかも待ってたって……あ、新手の美人局つつもたせか?

 それとも冷やかし、さては俺がフラられるとこ見て、笑おうって魂胆か?

 速攻、動画でUPうぷされるのか。

 まさか、すでに実況生配信されてるとかじゃねーよな。

 「沙田。ここが何階かわかる?」

 質問の意図がわからなかった。

 俺の思考がとんでもない場所まで飛躍してたということもあるが。

 階数のなにが問題なんだ?

 「ここって三階だろ?」

 俺は九久津に近づき、顔の真ん前で右手の人差し指、中指、薬指を順番に立てた。

 つまり三階の「三」を表現してやった。

 「違う」

 身振り手振りで否定する九久津。

 「じゃあ何階だよ?」

 「ここは最上階!!」

 ドヤ顔の九久津。

 そんな顔でもイケメンだった。

 「やっぱり三階じゃないか?」

 「いいや」

 首を横に振りもったいつける。

 「九久津、いま――ここは最上階!! って言っただろ? 俺は転校初日に六角第一高校が何階建てか確かめたぞ?!」

 「本当に?」

 「ああ、絶対に!!」

 俺が確信を持ってそう答えたときだった。

 「いいえ。ここは学校の最上階……の……四階よ!!」

 女性の声がした。

 えっ、寄白さん……よ、四階?

 この建物って四階建てなの……?

 俺は周囲を見回した、見間違えた……わけじゃ……ない……よな?

 「寄白さん。けど俺が見たときは確実に三階だったよ?」

 なんか雰囲気が変わったような、あっ、髪型か。

 ポニーテールも似合うな、ピアスは相変わらずだけど。




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